2010年7月11日日曜日

はやぶさ帰還に寄せて

 小惑星探査機はやぶさが地球へ戻ってきてもうじき一か月になる。
 カプセルの中身は今後のお楽しみとして、感じたことを記録しておこう。

 はやぶさの存在を知ったのはいつだったか。
 確実な記憶は、2005年にイトカワに着陸した時点からだ。
 それ以降、はやぶさのニュースが出るたびに、危機的な状況が続いていた。
 燃料漏れで姿勢が乱れ通信途絶した時にはひやひやしたが、JAXAの「そのうち回復する」との冷静なコメントに驚き、実際に回復した時にはさすがと思った。
 ただしダメージは大きく、当初2007年の帰還が2010年に遅れた。当時はずいぶん先のことと思っていたが・・・。
 2009年に4基あるイオンエンジンがすべて故障したとのニュースを見たときは「頑張ってきたけれど、もうおしまいか」と覚悟したが、なんとその数日後に「実はエンジン間をつないでました」というウルトラCを見せつけられ、夢でも見ているのかと思ったものだ。地上では試験できず、宇宙空間でのぶっつけ本番に成功した。それから約半年、予定通り地球の空へ帰ってきた。

 「小惑星への無人機往復」という世界初の快挙にもかかわらず、NHKはじめ日本のテレビ局はどこも生中継を組んでおらず、やむなくこの為だけにニコニコ動画のプレミアム会員となり、ニコニコ動画でのオーストラリアからの中継を見守った。
 誰かがコメントしていたが、これはテレビからネットへ報道の在り方が変わる転換点となったのかもしれない。
 ニュースの重要度を決めるのは従来はメディアであった。今後は、視聴者側にその役割が移動する前兆かもしれない。
 さて、その生中継ではやぶさ突入にともなう火球をリアルタイムで見ることができた。なぜだか涙がとまらず。これだけ泣いたのはいつ以来だろう。
 はやぶさはただの機械とは思えない。「何があってもイトカワのサンプルを地球へ届ける」という意思すら感じる。
 まったく奇跡と呼んでいい偉業だがその達成にはJAXAはじめ各メーカーの知恵と努力が欠かせなかった。「人事を尽くして天命を待つ」「天は自ら助くるものを助く」という言葉がこれほどふさわしい事例もないだろう。

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